【前編・一郎SIDE】
「クッソ…、なんでこんな時に限ってヨコハマの依頼なんか請けちまったんだ…」
視界に映る中華街の爛々とした灯りの数々が、先程からぐらぐらと揺れている。頭が痛い。足元がフラつく。夜になり気温は下がったと言うのに、全身が火照って堪らない。
連日の依頼での出張に加え、オオサカでのライブからのトンボ帰りでの仕事の連続。バトルでのダメージが回復し切らないまま、ここ数日ロクに睡眠を取っていない。
重い足を叱咤し前にと進めていく。やがて繁華街の喧騒は遠のき、駅に向かう途中の路地裏に足を踏み入れたときだった。
「お前が山田一郎だな…?」
背後から掛けられた声に振り向けば、数人の人影。更に路地の出口を塞ぐ形で、前方からも何人かの足音が迫る。
失態を自覚した時既に俺は、十人近くのチンピラ達に完全に包囲されていた。
「…名乗る時は、まず自分からって習わなかったんスか?」
内心で舌打ちする。普段なら事前に察知出来た筈だ。それほどまでに疲労と体調不良が積み重なっていたのだ。じりじりと距離を詰めて来るチンピラ達を尻目に、マイクへとそっと手を伸ばす。
「あいにくと俺らはロクに教育も受けてねぇからよォ」
「じゃあ人違いじゃないっスか?」
「間違いねェっスぜ兄貴! コイツは、昔あの碧棺左馬刻の隣に居た、山田一郎だぜ!」
聞きたくない名前に、思わず眉を顰める。ヨコハマに来れば、嫌でも思い出すかつての相棒。ソイツの隣に居た、だって? つまり俺への恨みじゃなく、アイツへの怨恨で俺は今こうして囲まれてるのかよ。──反吐が出る。
「……だったら、何なんだよ」
先程より更に激しさを増す頭痛を無理やり追い払うようにマイクを握り締める。尊敬していた頃のアイツはもう居ない。TDD、かつて一世を風靡した伝説のチーム。あの頃の輝かしい思い出は、思い起こせば懐かしいと同時に、胸がずきりと痛むものでもある。そして、追っていたあの背中が脳裏に過ぎる度に、腸が自分自身を焦がすように煮え繰り返る。
アイツの背中を追っていたあの頃の俺も、もう居ない。俺はもう、一人で戦える。
「ココで大人しく、くたばって貰うぜぇ?」
〈 敵サイド選択肢 : 以下のどれかを選べ 〉
・「弟共が居るんだってなァ。ソイツらがどうなってもいいのか、一郎おニーチャン?」と脅しを掛ける
・相手の足元がフラついていることに気付き、全員でリンチにする
・違法マイクでラップバトルを仕掛ける
山田一郎に向けた、敵サイドのバトルリリックを募集。
以下の投稿箱へ、「敵サイドラップ」と表題をつけ【2019.09.14.23:59】までに投稿せよ。
【後編:一郎SIDE】は、9/16にアップ予定